今回のお話は、
もしもコレクションを手放すなら?
の続きではなく、
全く立場が逆のお話。
この話を始める前に。
店主が持っている原画については以下の動画を参照。
どちらもトモハッピーとのコラボ動画。
【仰天】EIHO MAGIC COLLECTION 2018 【MTG】
(リンク先はYouTubeです)
【至高】 EIHO MAGIC COLLECTION 2019 【MTG】
(リンク先はYouTubeです)
ある方Nさんから今年、連絡をいただいた。
コレクションを手放したい、と。
最初にお話をした際、
Nさんとは会った事も無ければ、お話をした事がある人でもないと思っていた。
ところが、
お話を聞いていたら、
大昔にネットの掲示板で情報交換をした事のある一人だった。
そこからは話がおおいに盛り上がり、
全くコレクションを手放すという話をせずに、
2時間近くコレクションの話をしてしまう程だった。
この方とのお話は衝撃的だった。
衝撃的な事は良いお話でもそうでないお話のどちらにも。
良いお話のほうからお話をしていこう。
このコレクターさんは
《オーグ/Orgg》
《ラシーダ・スケイルベイン/Rashida Scalebane》
の原画を持っていた。
写真で見せていただいたが、圧巻だった。
特に《ラシーダ・スケイルベイン》のほう。
普通の人はこのカードって何?
と思うだろう。
《ラシーダ・スケイルベイン/Rashida Scalebane》
コスト:3白白
伝説のクリーチャー 人間(Human) 兵士(Soldier)
(T):攻撃かブロックしているドラゴン(Dragon)1体を対象とし、それを破壊する。
それは再生できない。
あなたは、そのパワーに等しい点数のライフを得る。
3/4
レア
ミラージュの白のレアで、
トーナメントカードになった事もないようなカードだ。
ミラージュのストーリーには出てくるのだが、
こんなカード覚えていない人のほうが多いカードである事は間違いない。
この絵は原画とカードで結構違いがある。
原画ではラシーダさんの足の先まで全て描かれている。
原画からトリミング(切り取り)されてカード化しているカードがある事は知っていたが、
原画とカードを比べてこんなにも違うのかと驚いた。
このコレクターさんはこの2枚は手放すつもりは無いらしい。
今回手放すつもりの品は別の原画だった。
これがまた随分と面白い品だった。
《Rainbow Knights》
《Orcish Catapult》
《Gem Bazaar》
という3枚だ。
この3枚のカードの効果を一瞬で言える!と言ったら、
店主がMTG博士の称号をあげてもいいくらいのカードだ。
普通わかるわけがない。
なにせこの3種のカードは、
カード化されていないのだから。
原画があるのにカード化されていないのだ。
何言ってんの?
と思うのも無理はない。
アストラルセットというものをご存知だろうか。
以前にこらむで紹介しているので知っている人もいるだろう。
このPC版MTGの中にしか存在しないカードなのだ。
カード化されているカードは《Aswan Jaguar》1枚のみで、
それもオーバーサイズドカードで作られただけ。
アストラルセットは全12種。
《Prismatic Dragon》イラスト:Amy Weber
《Rainbow Knights》イラスト:Douglas Shuler
《Power Struggle》イラスト:Mark Tedin
《Whimsy》 イラスト:Anson Maddocks
《Call from the Grave》 イラスト:Quinton Hoover
《Necropolis of Azar》 イラスト:Rob Alexander
《Goblin Polka Band》イラスト:Quinton Hoover
《Orcish Catapult》イラスト:Melissa Benson
《Aswan Jaguar》イラスト:Pat Morrissey
《Faerie Dragon》 イラスト:NeNe Thomas
《Pandora’s Box》イラスト:Amy Weber
《Gem Bazaar》イラスト:Liz Danforth
この12種類は原画が存在するものの、
普通のサイズのカード化はされていない。
イラストレーターを見るだけでも、
そうそうたるメンバーである事がわかる。
この12種類のカードは
ヴィンテージでも禁止で構わないので、
普通のサイズでカード化してほしい。
アンシリーズならカード化も難しくないような気もするのだが。
(やるならこのカード達だけは旧枠で作って欲しい。)
自分のMTG人生でまさかこの中のカードの原画を入手する機会があるとは思わなかった。
ちなみに、この中で一番欲しい原画は《Pandora’s Box》。
二番目は《Faerie Dragon》。
この2つはどこにあるのかすらわからない。
大昔に聞いた話では《Pandora’s Box》は日本にあるという話だったが。
しかし、ここで事件が1つ発生。
《Rainbow Knights》の原画はこのNさんが手放そうとした少し前に、
Nさんの親によって棄てられてしまったらしい。
この絵は《セラの天使》を描いているDouglas Shulerさんの絵。
入手出来たら非常に嬉しかった1枚だっただけに非常に残念だった。
この数年の間でも、
・婚約者が勝手にカードを棄てて婚約破談。
・息子のカードを母親が勝手にヤフオクに出品。
・友人のデッキを借りて、そのままカードショップに売り払った。
といった人間性を疑いたくなる話はいくつもあった。
(一部の話はガセではないかという噂もあったが。)
今回のものは衝撃が大きい。
世界に1枚の原画なのだ。
何枚も刷られているカードなら失っても構わないとは言わないし言えないが、
原画の重みはとても大きい。
絵画、彫刻品、陶芸品、果ては楽譜まで、
この世から失われてしまったものは歴史の中にいくつもあるのだろう。
その1つがここで消えてしまった事は本当に残念だった。
前述の「そうでないお話」とはこの事。
コレクターさんも
「まさか棄てられると思わなかった。
セラさんに託したかった。」
と言っていた。
失われてしまったものはどうする事もできないので、
《Gem Bazaar》
《Orcish Catapult》
の2枚をお譲りいただき、取引を終えた。
今回のこらむの本筋はここから。
もしも、これを読んでいる方がコレクションを手放す事を考えたらのなら、
その時はCardshop Serraの事を思い出して欲しい。
特に原画がこのような形で失われていく事は避けたい。
自分も100%の自信があるわけではないけれども、
可能な限りの管理と保守をしたい。
これを読んでいる方も、
一緒に考えて欲しい。
100年先、200年先でも、
このMTGの文化とカードと原画を残す事を。
今、この地球上にいる人間は200年後には誰も生きていないだろう。
そのくらい未来の人にMTGの文化を残したい。
それに、
MTGのカードや原画が200年以上先の未来に、
美術館や博物館に並んでいたら素晴らしいと思うのは自分だけではないはず。
夢物語かもしれないけれども、
自分はそういう未来を描いて今の仕事をしている。
今回、この1枚の原画が失われた事を知り、
自分は1つでも多くの原画や貴重なカードを守れたらと、
より考えるようになった。
今これを読んでいる方達、
自分達よりももっと先の未来を生きる人達のために、
このMTGを1つでも多く未来に残す事を一緒に考えたい。
この考えに一人でも共感してくれる人が増えてくれたら嬉しい。
ではまた。