今回は現役のスタンダードセットの偽物を入手する機会がありましたので、
偽物の流通を少しでも減らすことができればと思い、
注意喚起のためにTwitterにて告知を行いました。
するとかなりの反響があり、いくつか質問も頂きましたので、
こらむにてまとめて回答しようと思います。
まずは、今回の話題になった偽物カードを紹介します。
《弧光のフェニックス/Arclight Phoenix》
というカードです。
以下、頂いた質問と質問への回答です。
——————————–
質問1:チャレンジャーデッキ版か否かとかではないのでしょうか?
チャレンジャーデッキ版は重さは不明ですが、妙に色が濃かったです。
回答:いいえ、この偽物と判断したカードはチャレンジャーデッキ版ではありません。
チャレンジャーデッキ版と通常のパックに入っているカードは色合いが違いますが、
その違いではありません。
——————————–
質問2:ホログラムの形があからさまに違う(楕円じゃない)気がしますがどうでしょうか?
回答:はい、ホログラムの形も違います。
——————————–
質問3:売りに来た偽物を所持していたお客にはどういう対応してるんだろう?
回答:お客様には本物ではないことを説明し、買取が出来ない旨を伝えます。
お客様によって返品希望される方もいますし、
当店の資料として提供してくださる方もいます。
——————————–
質問4:裏面や透かしの画像もあると助かります。
回答:お問い合わせいただきましたカード裏面や透かしの画像については、
カメラ等の画像では認識がしづらかったので、
当店が使用している顕微鏡の画像にて本物カードと偽物カードの違いをご案内いたします。
以下の画像は左から「弧光のフェニックスの本物カード」、「弧光のフェニックスの偽物カード」、「同セットの同レアリティの本物カード」の順番で画像を並べています。
また、「同セットの同レアリティの本物カード」については、「弧光のフェニックスの本物カード」と区別をしやすくするために青いカードを選択しました。
画像1 ホログラム部分
本物はきれいな楕円形で色味もはっきりしていますが、
偽物はいびつな楕円形で色味もはっきりしていません。
偽物がいびつな楕円形になっている理由は、ホログラムを張り付けた際のカットの粗さによるものです。
画像2 シンボルマーク部分
本物はシンボルマークの輪郭がはっきりと黒のみで構成されていますが、
偽物は他の色が混ざっていて、はっきりしていません。
また、偽物は全体的に印刷が粗いです。
画像3 裏面文字部分
本物は文字の周りの茶色の部分がはっきりと点で認識できるのに対して、
偽物は点がつぶれて認識が出来ません。
また、偽物は文字の輪郭もぼやけています。
なお、今回の画像提供の為に使用した当店の顕微鏡はこちらです。
この顕微鏡は被写体を画像として取り込むことが出来るので、
今回はその画像を使用しました。
ご参考にしていただければ幸いです。
——————————–
質問5:foilの場合判別する際どのくらいの重さが基準となるのでしょうか?
回答:おおむねではありますが、FOILカードでも2gを超えると疑いが増します。
——————————–
質問6:売った人間は特定できないんですか?
回答:これは不可能です。これについては当店店主より詳しく後述いたします。
——————————–
質問7:Entonces la carta falsa es la que pesa mas de 1.73 ?
(では、偽カードは1.73を超えるものですか?)
回答:Si. Sin embargo, puede haber un rango permitido de hasta 1.80 g.
Si no cae por debajo de 1,80 g, es bastante peligroso.
(はい。ただし、+0.05gまでは許容範囲の場合があります。
1.80g以上の場合はかなり危険性が高いです。)
——————————–
ここまでは店主同様に偽物をある程度見抜けるスタッフがいますので、
そのスタッフが回答を書いてくれました。
翻訳ソフトを使用してはいますが、他言語にまで対応してくれました。
この中の質問の「売った人間を特定出来ないのか?」という質問についてです。
これはただ単純に、当店に買取を申し込まれた方であれば特定することは出来ます。
けれども、その方はほぼ間違いなく被害者であり、
偽物製作者や偽物と知っていて売った人ではないでしょう。
おそらくは下記のどちらかです。
「どこかで偽物をつかまされて知らないまま買取に出したら偽物だった。」
「真贋の判断をするために持ち込まれ、確認したら偽物だった。」
売った人間の特定というのは、
・偽物製作者
・偽物を偽物と知っていて平然と売ろうとする者
の事を指しているはずです。
この特定はとても難しいのです。
何年も前から聞いた話では、下記のようなことが行われているそうです。
まず中国人が偽物を作り、
売り子としてアルバイトを使い、日本国内のショップで買取に出します。
そして、カードの買取をおこなっているアルバイトが
偽物を見抜けずに提示している買取価格で買い、そのまま店頭に並べてしまいます。
仮にもし偽物だとバレても何の問題もなく、そのまま
「わかりました。」
と言って、偽物カードを持ってそのお店を去り、
別のショップに行って買取に出すだけです。
何度も繰り返して、いずれどこかのお店が騙せればOKというわけです。
巧妙にやるなら他の本物のカードに混ぜて出すという方法もとれます。
それから、トレード用のカードアルバムに偽物を入れておいて、
誰かと交換してしまうという方法もあります。
こちらも悪質な方法があります。
まず、カードアルバムには本物を入れておきます。
相手が欲しいと言ってきたら交渉を成立させます。
いざお互いのカードを交換する際に、
アルバム内ではなくて別で用意してある偽物を渡す、というやり方です。
このやり方は中国人の常套手段です。
何年も前に北京に行った事がありますが、
そこでTシャツを買った際のことです。
店員さんがTシャツを袋に入れる前に気が付きました。
シャツの質がおかしい、プリントもどこか粗いなぁと。
ただ、中国語が出来るわけではないので、
「ストップ!!」
と言って、
「そのディスプレイされているシャツをよこせ!」
という態度を示したら、
相手が渋々という感じでディスプレイされているシャツを袋に入れました。
ディスプレイされているシャツでも利益は出るのでしょうが、
そこでわざわざ質の悪いものを用意してあるのが邪悪に思えます。
けれども罪悪感すら無いのでしょう。
「あなたは納得してお金を払った。
私は商品を渡した。それだけでしょ。」
と思っているからこんな取引をするのです。
他人を騙す人というのはこういう所で罪悪感など一欠片も持ち合わせていません。
もちろんのこと、中国人の誰も彼もがこんな人ばかりではありません。
しかし、このテのもので人を騙す事や、
偽物を作る事について、中国がらみが多いのは否めません。
日本人もごく一部に悪人がいて偽物を作っている可能性もあります。
けれども海外で偽物を作るにあたって有利な事があります。
それは、上記の手段
・ショップに買取に出す
・カードをトレードする
のどちらであろうと、
「やるだけやったら帰国!」
という事が出来てしまいます。
騙されてしまった側は、
海外まで売った奴を追いかける手間を考えると
どう考えてもコストに見合わないので諦めるより他がありません。
仮に10万円分のカードに対して詐欺にあってしまったとして、
その人を追いかけて海外まで行っても、
10万円+渡航費が手に入るわけではありません。
その人がつかまえられるというわけでもありません。
完全な無駄足になる事のほうが多いのですから、
だいたいの被害者は泣き寝入りするしかありません。
犯罪者側はそれを狙ってやっているのでたちが悪いのです。
海外オークションでも同じような事が起きると厄介です。
出品されている画像は本物、
発送するものは偽物、
というケースがあります。
こういうタイプもまた困りもので、
言語が違うと言い合いだけでも意思疎通が困難で、
最終的に購入者が泣きを見る事になってしまいます。
似たような事はフリマアプリ:メルカリ等でも起きています。
日本人同士でも単純に開き直られてしまうと厄介です。
「あなたが偽物だと言ってるカード、
それ、こちらから買ったという証拠があるのか?」
と言われてしまう事もあります。
いくらなんでもメルカリやヤフオクで購入した際に、
到着から開封まで動画にしている人なんて滅多にいないでしょう。
そんな証拠でも出せれば相手も逃げられないのですが。
特に面倒な状態は、
購入から一定以上の時間が過ぎた後に偽物と知るケースです。
このケースでは90%以上返金不可能になってしまいます。
今回紹介したカードは、よく偽物の話題に上がるパワー9やデュアルランドのような高額品ではなく、
多くのプレイヤーが触れる、現役のスタンダードカードということに意味があります。
高額品ではなくとも偽物があるという事実を多くの人に知っていてもらいたいのです。
しかし、最近マジックを始めた人や、あまり普段からカードに触れない人では、
一見して見分けがつかないほどに最近の偽物はよくできています。
さらに近年のカードは、公式のものであっても
通常パックから入手するものと、構築済みデッキやコレクターブースターから入手するものでは、
明らかに質が違うものもあるのは事実です。
これらをすべて含めて、偽物に注意するというのは難しいかもしれませんが、
一人でも多くの人がこのこらむを読んで偽物に対する意識を持ってもらい、
少しでも偽物が流通しないようになれば嬉しいです。
それから、これを読んでいる人へ。
この日本国内だけでも結構な数のカードショップがあります。
そこで働いている人は社員もいればアルバイトもいます。
カードショップのオーナーさん達の中には、
店主のようにMTG大好きでショップをやっている人もいれば、
ある程度引退している人、
仕事として扱っているだけの人もいます。
その全ての人がプロフェッショナルではありませんし、
偽物が精巧に作られてしまえば、
そのプロフェッショナルであろうとも騙せてしまう事もあります。
まして、全てのアルバイトさんに偽物を見抜く技術を教える事も出来ません。
WotC社はとても必死になって偽物を作られないように偽造防止策をしていますけれども、
偽物を作る者とイタチごっこになってしまっている事は説明するまでもありません。
だから、
これからどこのお店で起きるかわからないけれども、
どうか偽物を間違って売ってしまったお店を叩かないであげてほしいのです。
誰にも間違いはあるものであり、
これだけ多くの偽物が出回る中で全てを見抜けと、
多くのショップに要求するのは酷だと思うのです。
加害者は偽物を作る人であって、
偽物をつかまされた時点で、お店も被害者なのです。
日本各地にあるたくさんのカードショップの人達にも生活があります。
オーナー、社員、アルバイト立場は違えど、
その場所で働いている人達は、決して偽物を売りたくて売るような事はしていません。
日本各地と書いたけれども、
普通のショップならどこであろうと同じだと思います。
人に悪い事をしたいと思っている人は普通はいないはずです。
100%パーフェクトな人がいないのと同じで、
偽物を絶対につかまされないショップなんてものはありません。
もしどこかのショップで偽物を買ってしまった場合に、
確かにいい気分はしないでしょう。
返品、返金を求めるのも当然であり、そうすべきだと思います。
けれどもネット等で叩く事はどうかしないでほしいのです。
繰り返しになりますが、お店で働く人も被害者であり、
そしてお店で働く何人もの人達にも生活があります。
本来罪の無いお店を叩く事で、
そのショップにたずさわる多くの人の生活まで脅かす事はどうかしないでほしいです。
憎むべきは偽物を作る人であって、
偽物をつかまされた人を叩いても、何も良い結果は得られないと思うのです。
以上です。
安いからといって信用に不安のある取引には、
どうかお気をつけ下さい。
ではまた。