Quantcast
Channel: Cardshop Serraのこらむ
Viewing all articles
Browse latest Browse all 1660

店主のお友達のお話

$
0
0

店主の友人にTという男がいる。

EDHデッキ紹介その54(Xenagos, God of Revels/歓楽の神、ゼナゴス)
EDHデッキ紹介その83(The Gitrog Monster/ギトラグの怪物)

のデッキを組んだ男。
いつも多種多様のデッキを組む中々のアイデアマン。

この人、とても経歴が面白いので、
ちょっと話題にしてみようと思う。

このT、学生時代にMTGを知った。

しかし、一緒に始める人がいるわけでもなく、
偶然見かけたMTGの第5版のスターターを1つ買ってみたそうだ。
この時点で、始めるきっかけとしては結構珍しいのだが、
それだけにはとどまらない。

Tは本当に一人でMTGを始めたのだ。
第5版には

縦:8.7センチ
横:6.3センチ
厚さ:約4ミリ

という、
作った人を小一時間問い詰めたくなるような、
MTGのルール説明書がついてくる。
5th Edition Instruction Manual

MTG歴二桁年数の店主ですら、
あの説明書は読破した事は無い。
というか読破する人がいるとは思えない。
あんな小さな字で長ったらしく、
しかもただのゲームのルール説明だけが延々と続く物体。
普通、MTGのルールを覚えるとしたら、
友人からルールを聞いて、
別に覚えなくても良いところや、
後で覚えれば問題無いところをすっ飛ばして覚えるはずだ。
おおむね実戦を混ぜて。
仮に読破したとしても、
大してルールを理解する事も出来ない冊子なのだ。
100人中99人が読まないはずのものである。

だが、彼は読んだ。
読み続けた。
言っている意味がわかるだろうか。
もう一度言おう。
読み続けた。

一緒に始める友人がたまたまおらず、
それほどインターネットというものが無い時代、
誰かに聞く事も出来ない環境の中、
Tは第5版ルールブックを読み続けたのである。
間違いなく変人である。

普通の人なら最初の1ページ目で心を折られるルールブックなのだ。
不眠症の方にならオススメ出来るかもしれないが、
健康的で一般的な日常生活を送る人に、
あんな冊子は心を病みかねないのでオススメしない。

仮に読んだところで、

「なんだこのわけのわからんゲームは。
 クソゲーじゃないのか?」

と投げ出すのが関の山というやつだ。
なお、T自身は

「なんだこのわけのわからんゲームは。

 面白そうじゃねーか!」



と思ったそうだ。
まるでクソゲーにチャレンジするクソゲーマニアのような台詞だが、
まさかそのチャレンジしたゲームが世界最高のものだったとは、
この当時のTも思わなかった事だろう。

そして、彼は読んだ。
読み続けた。
精神を病む事無く読み続けた。
強靭な精神力である。

さらにルールブックからマジック ビギナーズファイルへと読むものを変え、
マジックカードファイルを立ち読みし、
ルールとカードの知識を蓄えていった。

Magic Beginner's File
なお、このビギナーズファイルという本も基本的には役に立たない。
マジックカードファイルという本も基本的には役に立たない。

既におかしくなっていたかもしれないなどと言ってはいけない。
そして約1年の時間をかけて理解した。
MTGのルールを。

おかしい。

絶対におかしい。


あのルールブックやビギナーズファイルを一人で延々と読むなんてありえない。
当時はスタックルールもなく、
インタラプトやマナソースといったカードタイプや、
ダメージ軽減ステップなどというものがあった時代だ。
読み続けたところで普通理解できるわけがない。

1年間だ、1年間。
アンタ、その時間を他の何かに費やそうと思わなかったのか。
採取ポイントで薬草とハチミツを採取しているほうがマシだとか考えなかったのか。
ピッケル持ってドラグライト鉱石でも探しているほうがマシだとか考えなかったのか。

そして1年間、対戦する事すらなく、
彼はマジック ビギナーズファイルとにらめっこを続けながらも、
カードを買い続けた。
どうして絶望しなかったのか全く理解不能である。

時の最新エキスパンションは
ウルザズ・レガシー
だった。
(彼の買いはじめはテンペスト。)

この時代のスタンダードは、
第5版~ウルザズ・サーガ

MTG歴史を知る人ならばこの一言で時代がわかる、
「MoMaの冬」終了直後だった。

最初の第5版から10ヶ月
Tはついにデッキを作り大会に出場した。


初デュエル=大会


いるだろうか、こんなプレイヤー。

初大会がレガシー(当時はType1.5と呼ばれた)だった店主ですら、
さすがにこんなチャレンジャーな事はしていない。
いくらなんでも大会に出るまでに200回や300回は対戦したと思う。

初出場のデッキは黒単ウィニーだったそうだ。

1回戦目の対戦相手に、
「え、ノンスリーブですか?」
と聞かれ、
「スリーブってなんですか?」(本当に知らない)
と回答するT。

さらにじゃんけんで先手後手を決め、
じゃんけんに勝ったのに、
「後攻で。」
と答えるT。
相手が、
「なんでですか?」
と聞いてくるが、


「ゲームのターンの進行が、


 自分の知識であってるかどうかわからないから」



なんて口が裂けても言えない。
「はい、気にしないでください。」
と平静を装ったとか。

なお、大会の成績は3勝2敗。

この大会出場後、
「一緒にやる仲間がいない&忙しい」
という理由でMTGを休止している。

その後、どういう経緯だったかわからないが、
Tはいつの間にか店主とMTGするグループに入っていた。
お互い付き合いが長すぎて出会いがどんなものだったか覚えていない。
出会いすら忘れてしまったものの、
間違いなく10年以上のお付き合いである。


そして10年程前、突然に彼は、
「かなり前に福袋に入っていた
 Cardshop Serraのお買い物10%オフ券って、
 これ有効期限無いって言ってましたよね?
 間違いないですよね?」
と言い出して、
「うん。」
と答えたら、
「じゃあパワー9、《Timetwister》以外全部下さい。」
と言って、
いきなりヴィンテージの世界に足を突っ込んだ。

なお、その時に《Timetwister》は買わなかったが、
のちのちにEDHを始めてから購入し、パワー9を全て揃えた。

この頃と前後するが、
デュアルランドも買い続け、
当然のように10種4枚ずつの計40枚を持っている。

今の彼は、以下のレギュレーション全てをやろうと思えばできる状態だ。

・ヴィンテージ
・レガシー
・モダン
・スタンダード
・リミテッド
・EDH

なお、
さすがにオールドスクールは無理だと言っていた。
(再録OKなら組めるらしい。)
とはいえ完璧なオールラウンダーだ。
「長野にEDHオフ会があるぞ。
 なんか禁止カード全面解禁だぞ。」
と言えば、次の日にはデッキを組むし、
「温泉行こうよ。だらだらしながらEDHでもやろうか。」
と言えば、即二つ返事でOKの最高の友人である。

現在の彼は休止期間を除いても、
MTG歴は二桁の猛者。
休止期間を含めると人生の半分をMTGに突っ込んでいる。
つまりどこかの店主と同じである。
T自身は「一緒にしないでくれ。」と言うが、
間違いなく同類である。
そしてこれからも一緒にMTGをしていく一人であろう。

このTといい、今月のKといい、ズルゴ大好きっ子といい、
店主の周囲には面白い人や変わった人が案外いる。
「類は友を呼ぶというけれども、
 変わった人結構いるよね。俺以外。」
と言ったら、
「お前が諸悪の根源だよ。」
と言われた。
「仮に根源だとしても、
 その言い方は自分が諸悪の一部だという自覚はあるんだな。」
と返してあげた。

ではまた。


Viewing all articles
Browse latest Browse all 1660

Trending Articles