今回のお題は《ダークスティールの巨像/Darksteel Colossus》
エキスパンション:ダークスティールの名を冠し、
そのダークスティールを代表するカードの1つ。
まずはこの《ダークスティールの巨像》のテキストをば。
《Darksteel Colossus/ダークスティールの巨像》
コスト:11
アーティファクト クリーチャー ゴーレム(Golem)
トランプル、破壊不能
ダークスティールの巨像がいずれかの領域からいずれかの墓地に置かれる場合、
代わりにダークスティールの巨像を公開し、
それをオーナーのライブラリーに加えて切り直す。
11/11
レア
11マナ11/11で破壊不能とトランプル。
これが最初に出た時はおおいに話題になった生物。
《荒廃鋼の巨像/Blightsteel Colossus》が出るまでは、
ヴィンテージでも活躍する巨大生物だった。
このダークスティール製の生物のせいで、
《神の怒り/Wrath of God》が万能最強除去呪文の立ち位置を失った。
個人的な気持ちとしては、
《神の怒り》は大好きなカードの1つだったので、
「作るべきキーワード能力だったの?この破壊不能って。」
と思ったものだった。
剣と魔法のファンタジーの世界で、
「神」の名を冠するカード、
しかも「怒り」だ。
神の怒りを持ってして破壊出来ない生物、
それはファンタジーとして存在して良いの?
という気持ちだった。
よくありそうなファンタジーでは、
最上級:神、神と対抗する魔王、竜王や神竜みたいな位置づけの竜
上級:竜、上級魔族、上級エルフ
中級:だいたいの亜人、魔族、魔物、魔法で作られた生物
下級:人間、弱めの亜人
という強さのイメージだ。
で、たまに人間族から生まれ出る伝説の勇者さんが上級あたりに来て、
伝説の武器と勇者パワーで神か魔王を張っ倒すのがお約束だ。
この構図からして神やら魔王の力を持ってして、
破壊不能な生物というのはちょっとイメージからしておかしい。
その割に《剣を鍬に/Swords to Plowshares》で農場送りに出来る不思議。
余談になるけれども、プレインズウォーカーは神にも等しい魔法使いなので、
最上級から上級の間くらいだと思っている。
そのプレインズウォーカーの実力次第でランクが変わるだろうから、
あくまでだいたい。
みんな大好きニコル・ボーラス様は当然、神or魔王級だ。
竜族かつプレインズウォーカーなのだから当たり前。
と、こんなファンタジー好き独特の不満感はありつつも、
出ちまったカードに文句を言っても始まらない。
そしてツイッター質問箱でこのような質問。
———————
なぜダークスティールの巨像が嫌いなんですか?
———————
この生物を店主があまり好きではない理由というのは、
こらむ全部読むとどこかに書いてあるような気もするけれども、
せっかく質問が来たので回答しようかと。
まず、この《ダークスティールの巨像》が出た頃、
スタンダードには《歯と爪/Tooth and Nail》を使うデッキが存在した。
そのフィニッシャー手段として使われた事もあるカードだった。
《ダークスティールの巨像》のデッキへの採用枚数は当然1枚。
で、
その頃この《歯と爪》デッキを使っていた時のこと。
初手の手札に《ダークスティールの巨像》さんご降臨。
おわかりか。
手札が6枚と同じだ。
いきなりマリガン1回したのと同じという事だ。
11マナ11/11なんて、
1ターン目にあったからなんだというのか。
どうせ《歯と爪》で出すのだから、
別に手札に来なくてもいいのだ。
来なくてもいいというより、
来ない方がいいのだ。
《歯と爪》を双呪するためのマナを揃える事が最重要なのだから。
《歯と爪》は素撃ちで7マナ、
双呪で9マナ、
11マナもかかるわけではない。
で、マリガンしてみる。
よし、《ダークスティールの巨像》は来なかったぜ、キープ!
最初のドロー、《ダークスティールの巨像》さんご降臨。
・・・いや、たしかにライブラリーの中にあったら、
確率的に毎ドローにつき1/50くらいあるよ。
でもね、来なくていいんだよ、《ダークスティールの巨像》さん。
君、手札に来ると確実に勝率下がるんだよ、わかる?
こんな事が何度も続いた。
大会の決勝戦の時にも起きた。
最終的に11マナ払って出した事もあった。
次、ヴィンテージのお話。
この《ダークスティールの巨像》さんは、
登場した頃、《修繕/Tinker》一発で場に出るフィニッシャーとして選ばれていた。
または《ドルイドの誓い/Oath of Druids》のデッキにも採用されていた。
ヴィンテージのデッキを色々と使う店主は当然この2種のデッキも使っていた。
もう、わかりますな?
初手にあるんですわ。
スタンダード以上に1マリガンの重みが大きいヴィンテージで、
この《ダークスティールの巨像》さんが初手にあるというのは、
あまりにも重たいハンデ。
ひどい時なんて、
《渦まく知識/Brainstorm》で《ダークスティールの巨像》をライブラリーの中に戻し、
フェッチランドでシャッフルした次のドローで《ダークスティールの巨像》をドロー。
脳内でワタクシ言うわけですよ、《ダークスティールの巨像》さんに。
「遊びでやってんじゃねンだよ!」
でも手札に来ちゃう11/11。
さらに《Ancestral Recall》でこの11/11が来た時の絶望感。
単純に考えても、
「《Ancestral Recall》撃ったら2枚しか引けなかった。」
という理屈。
しかも、ひどい時だと、
《Ancestral Recall》で《修繕》と一緒に手札に来る。
《修繕》を撃った際のサーチ先が手札に来るという事は、
これは相当なアドバンテージを失っている事になる。
普通だと《Ancestral Recall》を撃つと、
「よっしゃ!アドバンテージ!」
となるところだが、
11/11生物と《修繕》が一緒に来ると、
「《Ancestral Recall》撃ったら負けそうな気持ちになった。」
という。
こうなってしまうと、
《渦まく知識》+フェッチが頼り。
無ければ相当不利になる。
もうね、フリーでプレイしていて負ける負ける。
フィニッシャーが全て手札にある《ドルイドの誓い》デッキほど無様なものはない。
ほぼただのサンドバッグだ。
《修繕》タイプは《ダークスティールの巨像》1枚手札に来るだけで負けはしないが、
不利は不利。
そこで開き直った店主は《ダークスティールの巨像》なんて無視して、
茶単デッキ、いわゆるMUD系のデッキに走るわけですよ。
そして、大会にそのまま出場。
対戦相手、
「1ターン目《修繕》撃ちます。
《ダークスティールの巨像》出してエンド。」
この挙動は、MUDのデッキで対処出来るカード、
《映し身人形/Duplicant》
《イス卿の迷路/Maze of Ith》
くらいしか無いわけだ。
《イス卿の迷路》ならともかく、
《映し身人形》だと6マナが揃わないまま2回パンチされて死ぬ事も珍しくない。
で、この2種のカードを採用していなければ、
高確率で敗北必至。
もちろんデッキにこの2種採用していなかった。
即死。
次。
対戦相手、
「1ターン目、モックスと《禁忌の果樹園/Forbidden Orchard》から、
《ドルイドの誓い》をプレイしてエンド。」
これまた、MUDに対してやられたら最悪と言えなくもないスタート。
MUDは凶悪なアーティファクト・クリーチャーと、
相手を締め上げるアーティファクトでアドバンテージを取るデッキ。
初手で《ドルイドの誓い》だけは置かれたくないエンチャントなのだ。
で、しかも《禁忌の果樹園》でこちらにはトークンも押し付けられている。
開き直って展開していく以外に道はないが、
相変わらず2回攻撃を通したら終わりな《ダークスティールの巨像》さんだ。
1ターン目:《ドルイドの誓い》プレイ。
2ターン目:《ドルイドの誓い》から《ダークスティールの巨像》が着地。
3ターン目:パンチされる。
4ターン目:パンチされる。
でゲーム終了になる事を1ターン目に宣言されるわけだ。
対処法なんて当然前述と同じ
《映し身人形》
《イス卿の迷路》
くらいしか無いわけだ。
即死。
MUDは相当に問答無用の強さを誇るデッキだが、
《ドルイドの誓い》デッキには相性が良くない。
一度でも巨大生物に着地されると、
対処法が限られてしまっているし、
MUDは相手を締め上げる事が出来るデッキだが、
アーティファクトクリーチャーでライフを削る事が多いので、
展開をしなければならない。
しかし、展開をすれば《ドルイドの誓い》に引っかかる。
これが厳しい。
そしてアーティファクトだけでエンチャントを対処するのも難しい。
1ターン目の《ドルイドの誓い》は、
《禁忌の果樹園》無しでもMUDにはきつい。
死刑宣告に近い。
ただ、ある時面白い事も起きた。
ヴィンテージでの対戦時、
対戦相手が《闇の腹心/Dark Confidant》をプレイ。
次のアップキープ。
《意志の力/Force of Will》がめくれる。
おお、5ライフ損失、痛そうだ。
さらに次のアップキープ。
《ダークスティールの巨像》がめくれる。
おお、11ライフ損失、ライフ0以下になった。
何もしていないのに相手が勝手に倒れた。
60枚中の1枚だけの11マナだから、
そんな簡単に《闇の腹心》でめくれないと思っての採用なのだろうけれども。
いや、でも、デッキ構成はたぶん
1《ダークスティールの巨像/Darksteel Colossus》
4《意志の力/Force of Will》
のはず。
そうなると割合的には危険な気も。
なかなかにチャレンジャーな方だ。
こんな色々なエピソードが《ダークスティールの巨像》にはあった。
そんなエピソードを経て、
《ダークスティールの巨像》が登場したミラディンブロック時代、
数々の邪悪なアーティファクトが登場したが、
この《ダークスティールの巨像》さんだけは、
どうにもこうにも性に合わない生物だった。
たぶんこのカードは店主の事が嫌いなんだろうと思った。
やっぱりあの時代のアーティファクトは親和系のカードが一番好きだ。
《金属ガエル/Frogmite》
《電結の荒廃者/Arcbound Ravager》
《頭蓋囲い/Cranial Plating》
《物読み/Thoughtcast》
《教議会の座席/Seat of the Synod》
数々のレギュレーションで活躍したこれらのカードは、
本当にお世話になった。
そして、ダークスティール発売(2004年2月6日)から7年、
ミラディン包囲戦発売(2011年2月5日)。
このセットで《荒廃鋼の巨像/Blightsteel Colossus》登場。
《Blightsteel Colossus/荒廃鋼の巨像》
コスト:12
アーティファクト クリーチャー ゴーレム(Golem)
トランプル、感染、破壊不能
荒廃鋼の巨像がいずれかの領域からいずれかの墓地に置かれる場合、
代わりに荒廃鋼の巨像を公開し、それをオーナーのライブラリーに加えて切り直す。
11/11
神話レア
コストが1増えて、感染能力がついた。
もともと《ドルイドの誓い》や《修繕》で持ってくるつもりなので、
コストはあんまり関係がなく、
感染能力で一撃必殺に変化したほぼ上位互換。
もともとの《ダークスティールの巨像》の11/11では、
2回殴る必要があったが、
《荒廃鋼の巨像》は攻撃が通れば1撃で毒11個で瞬殺が可能だ。
この巨像の登場で《ダークスティールの巨像》は完全に立場を失った。
この2011年2月から2020年の現在までの9年、
《ダークスティールの巨像》はヴィンテージで見る事は一切無かった。
今後もおそらく無いだろう。
さらば、《ダークスティールの巨像》。
君は永遠にカードアルバムで寝ているといい。
ではまた。