EDHいくらかけてる?
こんな話をお客様とした事がある。
そういえばあまり考えた事が無かった。
どういう事なのかと言えば、
「デッキの総合計価格」
というお話だ。
「今は1万円するこのカードを俺は1000円で買った。」
「今は100円になったこのカードを2000円で買って損した。」
「このカードをタダでもらったから、かけた額は0円。」
という話ではない。
自分の購入による損益は全て無視したうえで、
「現在の相場価格でデッキの総合計価格はどのくらい?」
というお話。
この話題が出るまで、しっかりと考えた事はなかった。
ヴィンテージのデッキで、
「これ、テーブルの上に札束置いてあるようなもんだよね。」
「同名の宝石と同じくらいの金額だよね。花が一番高いのはどうかと思うけど。」
「財布の盗まれても大した事ないけど、デッキ失ったらシャレにならない。」
「被害額大きいのってクレカの不正使用よりデッキ盗難だよね。」
といった話題にはなるが、
それが合計いくらになるのかは考えた事がない。
ヴィンテージやレガシーの大会会場では、
大会の規模が小さくても会場全体で一千万円以上のカードが置いてある事がある。
高ければ強いという事もないのだが、
安くて強いデッキが限られているのもこの世界の常識。
そして、
同名のカードでも安いものもあれば高いものもある。
単純にこの話題は、
・EDHのジェネラルに対する愛情
・コレクターとしてのプライドやアイデンティティ
・マジックへの愛情
といったものだ。
わかりやすく一言で表現するならば、
「気合」
である。
デッキには、
「どんなにボロボロであろうとも、
どんな言語と版であろうとも、
デッキが強ければそれでいい。」
という言い方も出来る。
しかし、それだけでは面白く無いと考えるのが人間というもの。
自分の愛着の対象としてデッキの中身を自分色にするのは、
MTGの楽しみの1つである。
今回話題となるデッキは言わずと知れた、
セラ屋の店主と言えばこのデッキと言われるジェネラル、
《三日月の神/Kami of the Crescent Moon》。
この生物にむかって「ムーミン」というあだ名をつけたのは、
間違いなく自分なのだが、
「Cardshop Serraは知らないが、
《三日月の神》をムーミンと呼ぶ事は知っている。」
という人に出会った事がある。
Cardshop Serraより有名なのだろうか、このあだ名。
《三日月の神》のデッキは自分の中でもお気に入りのデッキなので、
気合を入れて構築している。
・基本は英語版。
・Beta版に出来るものは可能な限りBeta版。
・古く出来るものは可能な限り古く、または可能な限りFoil。
・ただし、絵柄が気に入っているものは安くても絵柄重視。
・基本土地にもこだわりを。
3つ目の項目は《通電式キー/Voltaic Key》がわかりやすいだろう。
再販されてFoil版があるのだが、
やはりウルザズ・サーガ版が好きだ。
もしウルザズ・サーガ版の絵のFoilでもあれば買うのだが。
《友なる石/Fellwar Stone》も同様。
やはりザ・ダーク版がかっこいい。
自分の場合はデッキのほとんどが英語版で、
たまに日本語版のカードがある程度なので、
多言語カードは一切無い。
英語版にしている理由は、
・多言語版は多くの人に理解されないし、自分も読めない事が多い。
・英語は一応世界共通語なので多くの人に理解される。
・英語版でカードテキストのエラーという事は滅多にない。
・日本語版ではカードテキストのエラーがいくつかある。
・英語版テキストがルールの基本であるという大前提。
・ほんの少しでも英語の勉強になる。
このデッキの総合計価格については下記のルールで計算。
・Cardshop Serraの状態と価格で計算。
・代用は一切認めない。
代用は一切認めないという一文は、
例えば、
店主の《三日月の神》のデッキでは、
β版NM-の《Timetwister》を使っている。
《火想者ニヴ=ミゼット/Niv-Mizzet, the Firemind》では、
別のβ版EX-の《Timetwister》を使っている。
そして、《精霊の魂、アニマー/Animar, Soul of Elements》では、
Unlimited版の《Timetwister》を使っている。
当然、《三日月の神》のデッキではβ版NM-で計算するが、
《火想者ニヴ=ミゼット》のデッキではβ版EX-で計算する。
《精霊の魂、アニマー》のデッキではUnlimited版で計算する。
「こいつ、《Timetwister》3枚も持ってんのか?
ヴィンテージの制限カード3枚所持とか、
頭おかしいんじゃねえの?」
と思う人がいそうだ。
甘いな、β版のPSA品も持っておるわ。
狂気の沙汰と言われてからが本物のコレクター。
正気の沙汰でCardshop Serraの店主はつとまらぬわ。
話がそれたが、
「代用は一切認めない」
というのは、
代用カードの事ではない。
もっとも、この話題は「いくら?」なので、代用カードは当然0円扱いになる。
1枚持っているカードをEDHで複数のデッキで使うための代用は仕方ない事もある。
その場合に1つ目のデッキで本物を使用、2つ目のデッキが代用カードならば、
1つ目はカード価格を計算、2つ目は代用部分は0円扱いとなる。
この部分はもろにカード資産が出るところだ。
どっかのマジックキチ○イ(略してマジキチ)の店主のように、
《Timetwister》を青いEDHのデッキの数だけ持っている人は普通いない。
さて、デッキの金額を見てみよう。
ジェネラル:《三日月の神/Kami of the Crescent Moon》SOK Foil NM- 英 3200円
-クリーチャー4枚-
《粗石の魔道士/Trinket Mage》5DN Foil EX- 英 700円
《潮吹きの暴君/Tidespout Tyrant》DIS Foil NM- 英 3600円
《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage》ISD NM 英 8500円
《真実の解体者、コジレック/Kozilek, Butcher of Truth》MM2 Foil NM 英 7000円
-インスタント19枚-
《否定の契約/Pact of Negation》FUT Foil NM 英 5500円
《Arcane Denial》ALL NM 英 150円
《神秘の教示者/Mystical Tutor》FTV Foil NM 英 2000円
《Force of Will》ALL EX 英 13000円
《転換/Turnabout》USG NM 英 150円
《Mana Drain》LEG EX 英 26000円
《大あわての捜索/Frantic Search》ULG Foil NM 英 1500円
《双つ術/Twincast》SOK Foil NM- 英 900円
《誤った指図/Misdirection》MMQ NM- 英 450円
《呪文貫き/Spell Pierce》ZEN Foil NM- 英 3600円
《渦まく知識/Brainstorm》MMQ NM 英 200円
《サイクロンの裂け目/Cyclonic Rift》RTR Foil NM 英 1500円
《High Tide》FEM NM 英 200円
《精神的つまづき/Mental Misstep》NPH NM 英 200円
《差し戻し/Remand》RAV Foil NM 英 4000円
《遅延/Delay》FUT Foil NM- 英 900円
《記憶の欠落/Memory Lapse》PromoFoil EX 英 800円
《徴用/Commandeer》CSP Foil EX 英 1800円
《撹乱/Disrupt》INV Foil NM 英 500円
-ソーサリー22枚-
《Timetwister》BETA NM- 英 150000円
《時のらせん/Time Spiral》USG EX 英 1800円
《時間のねじれ/Time Warp》PromoFoil NM 英 5000円
《時間の伸張/Time Stretch》ODY Foil EX 英 2600円
《時間操作/Temporal Manipulation》P02 NM 英 13000円
《荊州占拠/Capture of Jingzhou》PTK EX 英 40000円
《永劫の歩み/Walk the Aeons》TSP Foil EX 英 1300円
《明日の標/Beacon of Tomorrows》5DN Foil NM- 英 1900円
《思い起こし/Call to Mind》M11 Foil NM 英 200円
《意外な授かり物/Windfall》USG NM 英 150円
《精神の願望/Mind’s Desire》SCG Foil EX 英 1800円
《一日のやり直し/Day’s Undoing》ORI Foil NM 英 2000円
《瞬間の味わい/Savor the Moment》SHM Foil NM 英 2000円
《時間の熟達/Temporal Mastery》AVR Foil NM 英 3000円
《水の帳の分離/Part the Waterveil》BFZ Foil NM 英 1000円
《親身の教示者/Personal Tutor》POR NM 英 3000円
《デジャ・ヴュ/Deja Vu》P02 NM 英 100円
《定業/Preordain》M11 Foil NM 英 5000円
《呪文ねじり/Spelltwine》M13 Foil NM 英 400円
《思案/Ponder》M12 Foil NM 日 7000円
《ギタクシア派の調査/Gitaxian Probe》NPH Foil NM 日 7000円
《あと戻りの映像/Retraced Image》TOR Foil NM 英 500円
-エンチャント2枚-
《精神力/Mind Over Matter》EXO NM 英 1000円
《クルフィックスの指図/Dictate of Kruphix》Promo Foil NM 英 700円
-アーティファクト20枚-
《Sol Ring》BETA EX- 英 18000円
《師範の占い独楽/Sensei’s Divining Top》CHK Foil NM 英 20000円
《吠えたける鉱山/Howling Mine》BETA EX 英 14000円
《サファイアの大メダル/Sapphire Medallion》TMP NM 英 400円
《神話の水盤/Font of Mythos》CON Foil NM 英 700円
《通電式キー/Voltaic Key》USG NM 英 200円
《モックス・ダイアモンド/Mox Diamond》STH NM 英 4000円
《金属モックス/Chrome Mox》MRD Foil NM 英 7000円
《魔力の櫃/Mana Vault》BETA EX 英 45000円
《厳かなモノリス/Grim Monolith》ULG Foil NM 英 30000円
《寺院の鐘/Temple Bell》M11 Foil NM 英 700円
《水蓮の花びら/Lotus Petal》FTV Foil NM 英 3600円
《覚醒の兜/Helm of Awakening》VIS NM 英 150円
《Jeweled Amulet》ICE NM 英 300円
《連合の秘宝/Coalition Relic》FUT NM 英 1000円
《友なる石/Fellwar Stone》DRK NM 英 200円
《虹色のレンズ/Prismatic Lens》TSP Foil NM 英 700円
《Mana Crypt》PromoFoil NM 英 30000円
《バネ葉の太鼓/Springleaf Drum》LRW NM 英 200円
《オパールのモックス/Mox Opal》SOM Foil NM 英 10000円
-プレインズウォーカー3枚-
《求道者テゼレット/Tezzeret the Seeker》MM2 Foil NM 英 2000円
《ジェイス ベレレン/Jace Beleren》JVSC Foil NM 英 1400円
《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》FTV Foil NM 英 10000円
-土地29枚-
《沸騰する小湖/Scalding Tarn》ZEX NM 英 32000円
《霧深い雨林/Misty Rainforest》ZEX NM 英 30000円
《溢れかえる岸辺/Flooded Strand》KTK Foil NM 英 12000円
《汚染された三角州/Polluted Delta》KTK Foil NM 英 13000円
《教議会の座席/Seat of the Synod》MRD Foil NM 英 1200円
《古えの墳墓/Ancient Tomb》TMP NM 英 2500円
23《島/Island》Promo EURO1(スカンジナビア) NM 英 900円
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EDH:《三日月の神》デッキ(店主所有版)
合計金額:632,750円
(Cardshop Serra価格準拠、2015年12月)
自分でも合計金額を出してみて、
「冗談だろう?」
と思ってしまうような金額になった。
驚きの50万円超え。
ヴィンテージのデッキでもないし、
レガシーのデッキでもないのにこの金額。
ましてやデュアルランドがあるEDHデッキならまだしも、
このデッキは単色だ。
デュアルランドを多く採用出来るデッキは必然的に高くなるのだ。
例えば3色デッキだった場合、
デュアルランド3種
ギルドランド3種
フェッチランド9種
M10ランド3種
まではフルで採用される。
この18枚だけで結構な金額になる。
現実の世界も紙の世界も土地は高い。
当たり前の話なのだが、
Foilを全てやめて、Beta等も諦め、
可能な限り安く構築すればこんな金額になる事はない。
《Mana Crypt》のようにどう転んでも高いカードは仕方ないが、
それ以外を安くして組めば半額以下で組めるはずだ。
つまり、結構な強さのデッキ3~5個分の値段が1つのデッキになっている。
もしこんなデッキ構築を笑顔で淡々とやっている人が他にいたら、
その人は間違いなくマジックキチ○イ(略してマジキチ)である。(褒め言葉)
それから勘違いしないで欲しいのだが、
「お金をかけること=ステータス」
という事を言いたいのではない。
また、こういう話題を出すと、
「《島》をサマーにして、
白青フェッチと青黒フェッチを日本語Foilにして、
《精神を刻む者、ジェイス》を日本語Foilにすれば、
さらに値段があがる。」
などと言い出す人が出て来るのだが、
合計金額を誰かと競っているわけではない。
こういう事を言い出す人は、
「ヒーロー物のアニメや特撮で誰が最強?」
という話題から抜け出せないお子様である。
話題のおおもとは
「EDHのデッキの総合計価格はいくら?」
であっても、
大切な事はこだわりであって、お金ではない。
前述のように、
・EDHのジェネラルに対する愛情
・コレクターとしてのプライドやアイデンティティ
・マジックへの愛情
が大切なのである。
EDHという遊び方が出来てもう5年以上の時間が経った。
今はプレミアイベントから野良大会まで、
色々なイベント会場に行けば、
かなりの確率で遊んでいる人を見かける。
完全な公式レギュレーションではない遊び方で、
これほどの市民権を得た遊び方はMTGの20年を超える歴史の中で、
今まで無かった快挙と言っていいだろう。
この遊び方の良いところは、
やはりどんなカードでも1枚でOKという一点が大きい。
「1枚だから高額カード、強力カードを頑張って買おう!」
というところから、
1枚でも強力カードを使う事も増え、
そういったところから多くのプレイヤーが、
“強力カードを使う”という経験値を得る。
強力なカードを日常的に使っている人には中々感覚がわからない話だが、
強いカードにはそれ相応に強い理由と強い使い方があり、
未経験者にはその理由と使い方の両方を知らない事が多い。
それを1枚でも購入して使う機会があるというのは、
EDHの良いところの1つだ。
そして、
「1枚しかデッキに入れられないのだから、
その1枚を特別なもの(FoilやプロモやBeta版等)にしよう!」
という気持ちになる人も増える。
趣味の世界というものは、
金銭的余裕があってもなくても、
多少の特別性を出したいのが人間というもの。
そのこだわりが大切である。
EDHのように、
トーナメント環境における流行り廃りが無いという環境下では、
自分のお気に入りをいつまでも追求出来る一面は趣味としては最高である。
「○色のジェネラルでは、○○が最強だろ。」
と人に言われようとも構わない。
自分のお気に入りはこっちだ!
と自分だけのオリジナリティ溢れるジェネラルとデッキ構成で、
自分が満足するまで楽しめるのがEDHの良いところである。
さてさて、次は青赤のお気に入りジェネラル、
《火想者ニヴ=ミゼット》
のデッキのお値段を調べてみよう。
ではまた。
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EDHいくらかけてる?
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