2019年7月12日付けて有効となる、
EDHにおける禁止カード改定が発表された。
以下のカードが禁止に指定。
《パラドックス装置/Paradox Engine》
《エメリアの盾、イオナ/Iona, Shield of Emeria》
以下のカードが禁止解除。
《絵描きの召使い/Painter’s Servant》
まずは《パラドックス装置》について。
これは多くのプレイヤーが
「ああ、やっと禁止されたか」
と思っただろう。
誰がどう見ても危険そうな《パラドックス装置》は、
なぜか2年半もの時間放置されていた。
参考までに、
あの悪名高い《グリセルブランド/Griselbrand》は、
EDHで使用可能な時期はあったものの、
すぐに危険性が認識され、
発売から1か月と少々で禁止されている。
EDHを管理する機関によると、
禁止の基準については
「1人以上のプレイヤーがゲームができなくなるカード」
について最も注意している、とのこと。
《パラドックス装置》は着地したら、
1人だけのゲームが始まってしまう=他の3人がゲームできなくなる
という意味で捉えることができるため、納得の禁止だ。
ではなぜ、
《むかつき/Ad Nauseam》や《変幻の大男/Protean Hulk》、《生き埋め/Buried Alive》
などは野放しなのだろうか。
《むかつき》は40点ライフで始まるEDHでは軽すぎる代償で、
5マナのインスタントにそぐわない大量の手札補充ができてしまう。
高速環境に向けて組まれたEDHデッキは、
「デッキ内カードの点数で見たマナ・コストの合計」が、
200未満になることが多い。
上記から計算して、
デッキに入っているカードの平均マナコストを2マナとすると、
15枚くらい引いても大丈夫ということになる。
5マナのインスタントでこの効率は異常だ。
もちろん、
《むかつき》のために最適化されたデッキでは、
もっととんでもないことになる。
一方《変幻の大男》や《生き埋め》はそれだけで、
コンボに必要なパーツをすべて集めることができてしまう。
いずれも「1人だけのゲームが始まってしまう」ことに変わりはないと思うのだが。
なお《変幻の大男》は戦場から墓地に置く手段
(というか、はっきり言うと《閃光/Flash》)
が必要で、
《生き埋め》は墓地からクリーチャーを吊り上げる手段が別途必要。
すなわち、それ1枚では勝てないから禁止されない、
と考える人がいるかもしれないが、
《パラドックス装置》も単体では勝てないカード。
そのため特別扱いするのはおかしいと言える。
上記2枚と《パラドックス装置》の違いを強いてあげるとすれば、
《変幻の大男》や《生き埋め》は、
単体ではあまり役に立たないコンボ専用パーツを、
デッキに一定枚数入れなければならないことだろうか。
(《パラドックス装置》は主にマナ・アーティファクトと組み合わせて悪さをするが、
マナ・アーティファクトは《パラドックス装置》の有無に関係なく投入し、
呪文を唱える速度を向上させるのが当たり前であるため、
専用パーツではなく汎用パーツと扱われる。)
しかしこれは、
「《パラドックス装置》だけが禁止となる理由」
としては弱いように感じる。
続いて《エメリアの盾、イオナ》《絵描きの召使い》について。
もともと禁止だった《絵描きの召使い》は、
今回入れ替わりで禁止となる《エメリアの盾、イオナ》とのコンボで、
各対戦相手が一切の呪文を唱えられなくなってしまう。
両方が使えた時代のEDHでは、
双呪の《歯と爪/Tooth and Nail》でこの2枚を同時に出す事が出来、
また、他の方法でもコンボ(《丸砥石/Grindstone》と《絵描きの召使い》)があった事から、
《絵描きの召使い》が禁止されたと推測される。
今、この2枚の禁止が入れ替わったのは、
《エメリアの盾、イオナ》が、
前述した「1人以上のプレイヤーがゲームができなくなるカード」に該当するからだろう。
上記のコンボを封じられた後の《エメリアの盾、イオナ》は、
《巨大なるカーリア/Kaalia of the Vast》をジェネラルに据えたデッキで活躍していた。
しかし、特に単色デッキで《エメリアの盾、イオナ》を出されてしまうと、
ほとんど何もできなくなってしまう。
そうなってはつまらない、ということだ。
それよりは、
「《エメリアの盾、イオナ》とコンボになるが、
単体ではそれほど悪さをしない事と、
除去しやすいタフネスであり、アーティファクトである事から、
《絵描きの召使い》と禁止をひっくり返してしまおう」
という狙いなのだろう。
それにしてもこのEDHのルールを決めている委員会とやらは、
コンボと青いデッキに対する考え方が甘いと感じている。
それに
「1人以上のプレイヤーがゲームができなくなるカード」
「コンボの必須パーツ」
「あまりにも強すぎて環境を壊す。」
といった危険要素が無いカードが未だに禁止リストにある事も甘い。
筆頭は言うまでもなく《クルフィックスの預言者/Prophet of Kruphix》だ。
このカードのどこにそんな危険要素があるというのか。
環境をある程度理解している人100人にこんな質問をしたらどうだろう?
「《むかつき》と《クルフィックスの預言者》どっちが危険?」
と。
前者だと答える人の方が多いと思うのだが。
質問内容を、
「あなたはカウンター呪文を持っています。
《むかつき》と《クルフィックスの預言者》のどちらをカウンターしますか?」
に変えても良い。
普通にプレイをしているのなら《むかつき》はまず通さないだろう。
色々と言いたい事はまだ残っているけれども、
今回の禁止改訂で、
今後のEDHがますます賑わうことを願いたい。
少なくとも《パラドックス装置》禁止だけは遅すぎるとは思うものの、
この改訂は正しいと思うし、今後解禁すべきでもない。
ではまた。
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EDHニュース8
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