平素より当店のこらむをご愛読いただきありがとうございます。
現在、店主多忙につき、『店主の非日常3』の執筆が停滞しております。
そのため、店主が書き溜めていた別こらむを掲載いたします。
投稿を楽しみにしてくださっている読者の皆様、大変申し訳ございません。
これからも当店のこらむをよろしくお願いいたします。
スタッフ一同
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ツイッター質問箱でこのような質問をいただいた。
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MtGカードの高騰は、MtGカードコレクターの方からは、どういう認識なのでしょうか?
他分野ではありますが、日本の遊戯王カードコレクターの方々は、
ここ最近の遊戯王カードの高騰に対して、
『正常な(高騰する前の)相場に戻って欲しい』などという人もいます。
個人的には、トレカは、いわゆるアンティークといいますか、骨董品的なものではないのかなぁと。
私は、昔の絵画や壺などの骨董品などと同じで、
高騰するのは当たり前と思うのですが、
Serra様は、トレカの高騰に対して、どのような認識でしょうか?
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まず、
『正常な(高騰する前の)相場に戻って欲しい』
というこのお話。
実はこれは経済的に考えるとおかしな事を言っている。
極端な例を出せばわかりやすい。
その例とはゴッホ。
ヴィンセント・ヴァン・ゴッホは生前に評価されなかった画家。
全くのゼロではないにせよ、
生前に売れた絵は少ない。
(1枚しか売れなかったという説と5枚以上売れたという諸説あり。)
有名なゴッホの作品の1つに「ひまわり」がある。
これについた価格では50億円という記録がある。
「絵1枚にこの値段?異常じゃない?」
と言い出したらキリがない。
かと言って、
「正常な(高騰する前の)相場に戻って欲しい。」
などと言い出したところで戻るわけもなく。
死んだゴッホが
「なんで俺が生きてる間にその金額で売れなかったんだよ。
その金額で売れてたら俺、自殺なんかしてねーよ。
俺が死んでから評価するとか馬鹿にしてんのか。」
と怒るのだったら、ちょっと気持ちはわかる。
売買の相場というものは、
需要と供給で決まるので、
「今が異常。」
という理屈は実は通用しない。
変な表現だと自分でも思うのだが、
「常に異常」か「常に正常」なのである。
異常や正常というものは、
過去から現在を見た時に、
人間が身勝手に個人の価値観で判断するもの。
わざわざ「人間が身勝手に」と表現した事には理由がある。
もし神様というものが存在して、
人間の所業を見ていたらなんと言うのだろう。
神様が、
「せっかく地球作ってやったのに、
1億年の歴史も無い生物が随分と幅をきかせているうえに、
その馬鹿げた生物は、核爆弾という地球を破壊出来る道具まで作りやがった。
この生物、地球に存在する価値ねえな。」
と言い出して地球を滅ぼしにかかったら、
みんな納得するのだろうか。
もしそんな事を言い出す神様がいたら、
人間はそれを神様と呼ばないだろうし、
その人外と戦い出す人間は少なからずいるだろう。
(戦える存在かどうかすらわからないが。)
その戦う人間達は間違いなく自分達の事を正義と呼び、
自分達の事を正常と言うだろう。
しかし、神様(人外)の立場や生物の歴史の観点から見れば、
人間というものは、
「1億年の歴史もない生物」であり、
「その馬鹿げた生物は地球を破壊する道具を作った危ない存在」であり、
その人類史というやつは異常なのである。
神様でなく人間の誰かが
「正常な生物の歴史に戻って欲しい。」
と思ったところで、
人間は少なくとも今日や明日には滅びないだろうし、
もう一度恐竜が地球を闊歩する時代は100年や200年先では来ないだろう。
相場や価値観というものはこんなものなのだ。
さて、そんな地球を滅ぼせる馬鹿げた生物のお話はこのへんにしておくとして、
「トレカの高騰に対して、どのような認識か?」
というお話に。
これは質問者の方とほぼ同意見。
現在、トレーディングカードの一部は骨董品、芸術品に似た扱いを受けている。
今後MTGが廃れなければよりトレーディングカードゲームの王としての地位を確立し、
価格についても高騰していく事になるはず。
仮にMTGが廃れたとしても、
新セットが一切発売されなくなり、アクティブユーザーが激減したとしても、
「世界で一番最初のトレーディングカードゲーム。」
という地位が揺らぐわけではない。
他のトレーディングカードゲームについては、
そのカードゲーム次第としか言えない。
各国内だけのローカルで簡単に滅んでいくトレーディングカードゲームは数えきれない。
それらはMTGとは違って価値のあるコレクターズアイテムになるとは言い切れない。
ゲームバランス、ユーザー数、知名度、芸術性など、
沢山の要素がハイレベルで継続する事が出来たものであるのなら、
100年先の未来でも取引が行われ、
価格も相当なものになる。
以前に話した、根付のお話を覚えているだろうか。
こらむ『もしも運命の日が来るのなら』
このこらむに詳しく書いてあるので、
興味がある人はどうぞ。
このこらむに書いてある根付というアイテムは、
別に日常的に現在使われるものではない。
完全にコレクションの世界のものだ。
陶磁器や絵画などのコレクションも同じだが、
毎日自分のコレクションの全て必ず眺める人なんて滅多にいないだろう。
コレクションというものはそういう意味でも、
日常的に使われるものではないからこそコレクションという言い方もある。
つまり、
MTGが廃れてしまってもコレクションという世界は残るはずで、
一定のコレクターがいれば価格も下がりにくいのでは?と。
だいたいにおいて、
MTGが完全に廃れて、誰もプレイしなくなり、
MTGのカードに全然価値がなくなってしまったとしよう。
そしたらどうなるか?
加藤英宝という人は価値がなくなった《Black Lotus》を喜んで買いまくる。
価値がなくなった《Time Walk》を喜んで買いまくる。
加藤英宝という人の遺族が、
「あの馬鹿はわけのわからん紙に金ばかり使って、
何一つ遺産らしい遺産を遺せなかった大馬鹿野郎だ。」
と言われる事になっても構わず買い続ける。
だが、
そんな日は来ないだろう。
そのくらいにMTGというものは世界に認められる日が来ると信じている。
100年先か200年先か、
少なくとも自分が見る事の出来ない未来の日、
骨董品や芸術品の大手オークションに出品される日が来ると信じている。
運良く生きている間にそんなオークションに出品される日を見られるのなら、
それはそれで非常に素晴らしい未来だ。
というわけで、
もしMTGが廃れた時は加藤英宝という人に《Black Lotus》や《Time Walk》を捨て値で売りに行こう。
もっとも、加藤英宝という人はMTGを廃れさせないための仕事をしているし、
MTGという文化は加藤英宝という人に簡単に《Black Lotus》や《Time Walk》を入手させてくれないほどに、
素晴らしい文化に成長している。
それにしても100年後の《Black Lotus》や《Time Walk》の値段を自分で確かめられないのは残念だ。
と、トレーディングカードゲームの高騰については、
こんな事を考えている店主でした。
ではまた。
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TCGの高騰について
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