今回はお客様からご連絡を頂き関わることになった偽物の話。
そのお客様は偽物の被害を受けてしまい途方に暮れていたところ、
以前書いたこらむを見てお店に連絡をしてくれたとのことです。
参考こらむ:偽物対策その1。
事情を確認後、今後の対応や行動を相談し
お店としてできることを一通り行いました。
奇跡的にもそのお客様は被害にあった金額を取り戻すことが出来ました。
そして今後の被害者を減らすためにもということで
今回の偽物の件について文章でまとめたものをご連絡いただきました。
ご協力いただきありがとうございます。
Cardshop Serraとしても、加藤英宝個人としても
偽物の流通を少しでも減らすことができればと思いますので、
注意喚起のために掲載させていただきます。
(お客様のそのままの文章を記載しております。)
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令和2年(2020年)の年末頃、新型コロナウイルスの影響もあってか、
MTGシングルカードの価格が、これまでとは比較にならないほど高騰しました。
パワー9を毎年少しずつ買い集めようとしていた私は、
普通の会社勤めの給料では手に届かないような領域の価格帯になってきたこと、
ネットショップの在庫は枯渇し、あってもすさまじい値上げ状況であったことから、
どうにか1枚でも安く手に入れておきたいという気持ちでフリマアプリを見て回っていました。
年が明けて令和3年(2021年)。
私はフリマアプリで破格の値段でβの《Time Walk》が出品されているのを発見しました。
私もMTGを長く遊んでおり、普段ならば価格設定の異常さに手を出すことはなかったと思いますが、
ライトチェックや、電子秤での重量チェックの画像が出されていること、
出品は始めたばかりのアカウントでしたが、評価も40人ほどついており、
問題ないのではないかと思いました。
それよりも、これを先に他の人に落札されてしまわないかというあせりから、
冷静さを欠いており、焦って落札をしてしまいました。
しかしながら、落札してから冷静さを取り戻し、
やはり安すぎるし、偽物の可能性も高いのではないかと思い、
届いたらきちんと確認してから受取評価を行おうと思ってはいました。
ですがこれまでネットの取引でトラブルにあったことがなかったため、
「匿名配送である」ということや「個人間取引である」ということに、
それほど危険性を感じておらず、
後々これほどどうにもならない状況に陥るとは思ってもみませんでした。
最終的には本当に運よく、無事解決しましたが、
それまでに多くの時とエネルギーを費やしました。
この体験をシェアすることで、ショップより値段が安いからといって、
フリマアプリでカードを購入することがいかにリスクが高いことかを感じてもらい、
同じようなトラブルに巻き込まれる人が1人でも減るようにと思い
詳細な経緯ややりとりについてお伝えできればと考えています。
以下、今回の件について、運営・出品者とのやりとりの経緯、
各関係機関に相談してわかったこと、感じたことに分けて記載します。
過去の連絡の履歴からおおよその日付を確認して記載しているため、
日付や時系列が多少前後しているところがあるかと思いますが、ご容赦ください。
【運営・出品者とのやりとり】
2021年
《1/11》
落札。クレジットカードにて決済。
《1/14》
商品が届く。
商品を確認したところ、やはり偽物のように思えたため、
同日中に某カードショップへ持ち込み。
鑑定はしてはもらえないということであったが、
買い取り対象になるかという観点で査定してもらったところ、
偽物と思われるため買い取り対象にはできないという回答を得る。
同日、相手方に偽物なので返品対応してほしい旨の連絡を入れ、
メッセージのやりとりが始まる。
相手方の主張は、買い取り査定を行ってから返品してほしいということは
転売しようとしたが利益が出なかったため返品してほしい
ということだろうから、自己都合による返品は受けられないというもの。
しかし普通に価値のわかる者なら、転売したところで
十分利益が出るぐらいの破格さの落札価格であったため、この主張は明らかにおかしい。
そのため、改めて出品者の画像と届いた物を比較したところ、
傷の位置、白かけなどの位置も異なっており、
画像と違うものが送られてきていること、
出品者が詐欺師であることが判明。
その旨、運営にメールし、返答を待つ。
《1/16》
運営から「個人間取引なので、双方で納得いくまで話し合うように。」という回答。
話し合いが続いている間は、出品者にお金は振り込まないので、
絶対に受取評価はしないようにとのこと。
詐欺した相手方がまともに話し合いに応じるわけがないため、再度運営に連絡。
《1/19》
運営から再度返答。相手方に届いた物の画像を提示して話し合うようにとの回答。
《1/20》
私は届いた商品の画像と商品を電子秤に乗せての画像を用意してアップし、
出品時の画像と異なる物が届いている旨を主張。
しかし相手方は、画像ではよくわからない、とまともにとりあわない。
このころ、偽物を送っているのなら、
出品者のアップした画像はどこから手にいれたのだろうと思い、
ネットで画像検索すると、別のオークションで使用されたものを加工して利用していることが判明。
つまり、
・画像は本物。
・送る品は偽物。
だったのです。
その旨も合わせて運営に連絡。
《1/23》
運営から「きちんと画像の確認をするように出品者に連絡した。」と回答。
また運営ではオークション画像が流用されたものかは確認できないとのこと。
しかし、相手は届いてから私がすり替えたのだろうと反論。
話が進まないため、再度運営に連絡。
《1/26》
運営から、査定資料なども提示して話し合うようにと回答。
一般のカードショップでは査定を書面でくれるところは見当たらなかったが、
ネットでカードショップセラで対応してもらえたというような記事を見かけたこと、
また直近の英宝さんのコラムで偽物対策の話がちょうど上がっており、
なにかあれば遠慮なく相談するようにという旨が書かれていたため、
メールでやりとりしアポを取る。
《1/28》
カードショップセラを訪問。
英宝さんに直接ご対応いただく。
法人の印を付けていただき、査定資料を作成してもらう。
弁護士や警察に相談することなどアドバイスをいただき、
今後も進捗を報告しながら相談に乗っていただけるとのことになった。
同日、査定資料を画像にアップし、相手方と話し合う。
しかし、いくら査定資料があっても、
そちらが偽物を用意して査定していたとするなら意味をなさないと相手は反論。
自分で偽物を送っておいて、よくそこまで言えるなとあ呆れつつ、運営に報告。
《2/2》
運営から連絡。被害にあったことは心苦しく思うが、
個人間取引にはやはり介入できないし、
これ以上連絡をもらっても、同様の回答しかできないとこと。
これ以上、相手方と議論しても意味をなさないため、
このあとは取引が強制終了にならないよう、
相手方も私も内容のないメッセージを定期的に残し続ける状況が続いた。
《2/10》
運営から突然連絡があり、
相手方に規約違反があったため、返品に応じるよう出品者に連絡するというメールが入る。
しかし何が違反かは示されなかった。
これで解決する!と思ったものの、
相手方は、運営からそんな連絡は来ていない、
返品時にすり替えられるリスクがあるから応じられない
と運営からの連絡を無視し続け返品先の個人情報は教えてもらえず、
以降も屁理屈ばかり返ってくる。
その旨を英宝さんに連絡したところ、
驚いたことに同じ出品者から被害にあっている人から相談がきたとの返答がある。
(※この方と同じ様に対応致しました。)
相手が返品対応してくれないにしても、被害者が同時期に2人も出ていれば、
運営も動いてくれるのではないかと期待する。
しかし、その後も運営からは返答がなく、更に1か月近くやりとりが続いた。
《3/9》
運営から再度の連絡。今回は特例で運営を通じて返品に応じるという連絡が入る。
やっとのことで、この2か月にわたるやりとりが終了。
連絡が来て即座に返品窓口あてに商品を返送。
確認が取れて3週間くらいしてやっと、取引がキャンセルとなった。
クレジットカード決済で一度引き落とされていたため、
クレジットカード会社から返金があったのは4月になってからであり、
最終的にお金が返ってくるまで考えると、3か月近くも経過してしまっていた。
【各関係機関に相談してわかったこと】
《弁護士相談》
相手方が匿名である以上、相手を特定しない限り、
内容証明を送ることも裁判をすることもできない。
弁護士は、裁判に必要な時は弁護士会を通じて、
相手方の個人情報を企業などに照会することも可能であるが(司法書士はできない)、
個人情報保護の観点から応じてもらえないこともあり、確率は半々程度。
しかも受任した案件についてのみ可能であるため、着手金が必要(弁護士の着手金は最低でも10万円くらい)。
回答が得られなかったら着手金がまるまる無駄になってしまう。
《消費者センター》
個人間取引についても相談できるような感じで
ホームページには記載されているようにも見えるが、
電話しても結局、個人間取引には関与できないの一点張りでなにもしてくれない。
行政書士に相談し、運営の対応を問題として話をし、
運営に個人情報の任意開示をしてもらうよう話し合ってみてはと
アドバイスをもらったが、根本が個人間取引なので、
そういった対応もできない、と全く親身になってくれない。
《警察》
最初に電話で連絡した時は、
「手元に届いた時点で偽物と自分で見破っていたなら、
それは詐欺として被害届は受けられない。」
と適当な回答であった。
再度、カードショップセラでの査定資料と相手とのやりとりを
プリントアウトした資料を持って警察署に相談に行った。
県警本部の方に行ったが、被害届は県警では受け取ってないから、
地元の警察署に行くように言われ、
仕方なく最初に電話した地元の警察で再度相談。
今度は資料を用意して対面で相談であったため、親身になって聞いてくれ、
書類などもコピーしてもらったが、結局のところ警察でも
相手が特定できないと何もできないらしい。
昔と違い、個人情報の関係で警察から問い合わせたとしても、
安易に個人情報を開示してもらえないとのこと。
また、相手に詐欺をする気があったかどうかは、
例えば内容証明を送ってみて、その場所に届かず戻ってきたような場合でなければ、
詐欺を立証できないため、被害届を受理するのは難しいとの回答。
《探偵》
とある探偵事務所(警察のOBがやっているらしい、比較的きちんとしてそうなところ)にも、
こういった場合に相手方の特定ができるのかと聞いてみた。
しかしながら、調査するのには100万近くかかるし、
確実にわかるとは言えないので、おすすめできないとのこと。
【感じたこと】
今回の件については、確かに個人間取引であり、
トラブルがあれば当事者間で解決しなければいけない、
ということを理解した上で落札すべきであり、
焦って取引をしてしまった自分に責任があることは間違いなく、
それについては文句を言える立場ではないと思っています。
トラブルを解決する場合というのは、
お互いの利害が対立するわけですから、話が平行線になる可能性は高く、
最終的な決着をつけるには、きちんと当事者同士の個人情報が分かり、
裁判など公の場でやりとりができることが必須だと思います。
しかし今回のように匿名配送の場合であって、個人情報が開示されないままの状態で、
話が完全に平行線になっているのに、それでも匿名のまま当事者間で解決するように、
と運営から言われるのは、さすがに納得がいきませんでした。
更に相手は、自分が詐欺をしているのにも関わらず、
こちらが逆にすり替え詐欺をしてだまそうとしている、
というような文言で精神攻撃を仕掛け、
こちらになんとか受取確認をさせようと卑劣なメッセージを送ってきます。
メールの着信音が鳴るたび、関係のない普通のメールでも
相手からの返信かな?とドキッとしていやな気持ちになるため、
寝る前にメッセージを送り、スマホの電源を落として寝るような日々。
毎日メッセージを忘れないようにしつつ、内容を考えなくてはいけないため、
仕事にも身が入らず、プライベートで遊んでいてもすっきりと楽しめない。そんな日々が続きました。
自分は比較的メンタルは強いほうだと思っていましたが、
こんなに精神的に負担を感じるとは思わず、軽率な行動を何度も悔やみました。
こんなやりとりをずっと続けるほうが人生の無駄だから、
今回はあきらめて、普通の日々に戻ったほうがいいのではないかと何度も頭をよぎりました。
しかし、定期的に英宝さんに相談させてもらえたこと、
相手に屈しないよう励ましのお言葉をいただけたことで、
なんとか相手とのやりとりを続けることができました。本当に感謝しております。
今回はたまたま同じ出品者から同時に被害を受けた人が出てきたこともあり、
特例で運営を通しての返品対応が認められ、
その点には本当に運営にも感謝しているのですが、
毎回このような対応をしてもらえるとは限らないと思うので、私は本当に運が良かったのだと思います。
しかし詐欺師である出品者を訴えることができるわけではありません。
今回のことで出品者にペナルティがあるとしても、
悪くてアカウント停止されるくらいで、
相手はまた別の方法で詐欺を働くことでしょう。
これについては、フリマアプリの仕組み自体が、
個人間取引だからと放置するのではなく、
フリマアプリを提供しているプラットフォーム側が
詐欺師の温床にならないよう、もっと改善を図ってほしいと思いました。
MTGのカードは一般人には真贋鑑定が難しく、
詐欺にあっても有名なブランド品のように運営から補償されることは難しいと思います。
価格が高騰してからは余計に詐欺の対象商材にされやすくなったこともあり、
今後も同じようなトラブルに見舞われる人も増えてくると思います。
またもし被害にあっている方が出てくれば、
解決例のひとつとして、アドバイスに役立てていただければと思います。
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お店より。
昨今のMTGの市場はとても激しく値上がりしています。
一部のカードについては、
信じられない程にカードの値段が上がっています。
「だからこそ早く手にいれられるうちに・・・」
と焦ってしまう気持ちもわかります。
しかし10万円以上のお金が動く買い物をする際に、
信用の無い相手にお金を支払う事はとても大きなリスクです。
そして実際にこうした被害を受けてしまうと、
このお客様のようにお金だけでは済まない苦労に見舞われてしまいます。
現状のフリマアプリはシステム上、
詐欺師側に有利になっています。
今回のように
「画像は本物、発送するのは偽物。」
という事をやられてしまった後、
「購入者が偽物とすり替えた。」
と主張されると完全に泥沼化します。
この時にも購入者が不利なうえに、
いつまで経っても目的の品は入手できません。
今回のケースは奇跡的にも被害にあったお金だけは帰ってきましたが
最悪の場合はお金も帰ってこないうえに、
時間、労力、精神的なショックといった面でも損害があります。
あらためてお客様にはこういう事を理解していただき、
その上で危険な取引には手を出さない事が望ましいと感じております。
最後に。
偽物を掴まされた事のある人、
今後そういう被害に遭ってしまった場合、
店主に遠慮なくご相談ください。
また、偽物の情報やカード等の提供があれば、
記事にて紹介する予定です。
ではまた。